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山の棚おろし

兵庫県の丹波市にて、山の棚おろしを行ってきました。

山の棚おろしとは、山の中にどのような品質の木材がどれ程の量あり、一体いくらの価値があるのか試算を行うことです。この情報は立木をどのような商品に利用出来、どこへ向けて販売して行けば良いのかを考える材料になります。今回は、山から実際に木を伐り、品質の調査を行い、製材所に運んで製品としての切出しをする一連の過程を体験してきました。

 

先ずは伐倒する木の選定をします。林層(エリア毎の木の種類)を見つつ、どの種別の木を伐るかを決めます。今回は杉の木を対象としました。周辺で2・3番目に太い木を選び、その木を中心とした半径5.65m内の木をマーキングします。この円は100㎡を明示するもので、100㎡以内の木が調査対象となる訳です。今回は8本の木が含まれてり、その内1本は枯れ木でした。8‐1=7本の木の幹直径(地面から1.3mの位置)を測り、その平均の直径を出します。曲り、腐れ、傷、枝打ちの有無も記録します。

 

いよいよ伐倒です。試験木は7本の内、平均直径に最も近い木とします。チェーンソーで立木に切り目を入れ、楔を打って倒す方向に木を傾けます。そして木の頭部に掛けたロープをウィンチで巻き上げ、引張り倒します。静かな森の中に、「カーン、 カーン、 カーン」という楔を打つを音がこだまして、あたりの空気がピンと張りつめたように感じます。音は鼓膜から頭の上に抜けていくように響いてきて、何か神聖ものに触れるような厳かな気分になりました。そして高さ28mの杉の木はゆっくりと傾いて、しなりながら倒れました。杉の木が倒れるさまは、まるで巨大な生き物が崩れ落ちるような雄々しさと生々しさがあって、しばし呆然と見とれてしまいました。

 

樹冠長(生きた葉がついている範囲の長さ)と樹高、根本から1m刻みの幹直径を計測し、記録していきます。

 

倒れた木の根元に立ち、曲りを見ながらどのような製材とするかイメージします。そして切り分けて行きます。柱に使われるのか?それとも梁か?何メートルの材とするのか?切り分け方によって使われ方が決まってしまう、とても大事な工程です。幹直径も加味しつつ無駄なく価値の高い材を多く取れる様に考えて切り分けます。

 

切り分けた原木の末口のスライスを持ち帰り、これを調査・観察します。講師のガイドに沿って、年輪の数から樹齢を読み、年輪幅や形状、色、節の位置や長さなどから、木の成長や傷履の履歴、枝打ちの有無や時期、製材時の反り癖など、実に沢山の情報を読み取っていきます。

この情報を元に、立木の平均単価を割り出します。調査エリアの杉は、立木一本当たり¥7937円1㎥当たり¥8988という結果になりました。樹齢40年、直径34cm、高さ28mの木が純粋な売値(搬出送費や作業人工等を含まない)として¥7937になるという事です。皆さんは安いと思われますか?それとも高いと思われますか?調査エリアは間伐はそれなりにされているようでしたが枝打ちはされておらず、個人的な感想としては手入れが行き届いている山という印象ではありませんでした。それでも40年かかって育った木が1本¥8000と言われると….。うーん価格って難しいです。

 

原木丸太を選んで木取りをして、実際に製材をしました。木取りとは、どんなサイズの製材を作るか考えてカット寸法を決めることです。ホームセンターで板材をカットして貰うのに寸法の分かる見取図を描きますが、あのような感じです。但し、相手は丸太ですから特殊な機械を使用します。丸太をセットした台車の様な機械を前後に動かし、その先にセットされた帯鋸に通してカットしていきます。カットした面を観察し、節や木目の状態を読みます。節が少ない材の方が売値が上がる訳ですので、節の深さなどを読みながら臨機応変にカットの厚みや角度を変えていきます。製材所の方のお仕事振りは、素人には信じられない判断スピードと阿吽の呼吸で、すっかり感心して見入ってしまいました。

 

最後に丹波の朝の風景です。山はこれから冬支度に入るといった風情でした。

また、温かい時期にも訪れたいと思います。